2026年夏の甲子園で、高校野球の歴史が大きく変わります。

第108回全国高等学校野球選手権大会から、

ビデオ検証

が導入されるからです。

プロ野球では「リクエスト」。

メジャーリーグでは「チャレンジ」。

サッカーでは「VAR」。

映像を使って判定を確認する仕組みは、すでに多くのスポーツで定着しています。

そして2026年、ついに夏の甲子園でも実施されます。

ただし、プロ野球のリクエスト制度と全く同じではありません。

  • 何回まで使える?
  • ストライク・ボールも確認できる?
  • 監督はどうやって申告する?
  • 誰が映像を見る?
  • 検証は何分かかる?
  • 判定が覆ったら使用回数は減る?

今回は、日本高等学校野球連盟が発表した公式ルールをもとに、2026年夏の甲子園で導入されるビデオ検証を分かりやすく解説します。


結論|9回まで各チーム1回

最初に結論です。

各チームがビデオ検証を求められる回数は、

9イニングで1回。

です。

延長戦に入った場合は、それまでに検証を使ったかどうかにかかわらず、

延長用として新たに1回

申告できます。

基本的なイメージは以下の通りです。

状況使用できる回数
1~9回1回
延長戦追加で1回
判定が変わった場合原則として回数を消費しない
映像で確証が得られない元の判定を維持

判定が覆ったら回数は減らない?

ビデオ検証の結果、審判の判定が変更された場合は、基本的に使用回数として数えません。

つまり、申告が正しかった場合は権利が残る仕組みです。

ただし2026年夏の第108回大会では特別な運用があります。

判定が覆った場合でも、9イニング中に再び求められる検証は、

あと1回まで。

です。

例えば、

1回目の検証で判定が覆る

権利が残る

2回目の検証を申告できる

それ以降は、9回まで追加申告できない

という形になります。

正しい申告を何度でも無制限に行えるわけではありません。


延長に入ったらどうなる?

延長戦に入ると、各チームに新たな検証権が1回与えられます。

9回までに、

  • 一度も使っていない
  • 使ったが判定が変わらなかった
  • 使って判定が覆った
  • 2度申告した

どのケースでも、延長戦では1回申告できます。

高校野球では延長10回からタイブレーク。

走者を置いた状態で始まるため、一つのアウト・セーフが試合を決める可能性があります。

延長用の1回をどこで使うかは、監督の重要な判断になりそうです。


ビデオ検証の対象となるプレー

すべての判定を確認できるわけではありません。

高野連が定めた主な対象プレーは以下の通りです。

ホームラン・エンタイトルツーベース

打球が、

  • フェンスを越えたのか
  • フェンス上部に当たったのか
  • 観客や物に触れたのか
  • エンタイトルツーベースなのか

といったケースが対象になります。

甲子園では外野フェンス際の大飛球が多く、最も分かりやすい検証対象です。


フォースプレー

一塁でのアウト・セーフ。

二塁封殺。

併殺時のベースタッチ。

など、走者より先に送球が到達したかを確認します。

「足が先か、ボールが先か」

という際どいプレーで使用される可能性があります。


タッグプレー

盗塁。

本塁への突入。

牽制球。

走者へのタッチ。

なども対象です。

捕手のタッチと走者の手。

野手のグラブとベース。

一瞬の差が映像で確認されます。


キャッチかノーキャッチか

対象となるのは、

  • 外野手の捕球
  • 内野手が外野方向へ背走して行った捕球
  • 内野手のファウルフライ

などです。

地面すれすれのダイビングキャッチ。

グラブに入った後でボールが落ちたプレー。

こうした場面で検証が行われます。


フェアかファウルか

フェア・ファウルも対象ですが、条件があります。

対象となるのは、

一塁塁審または三塁塁審の位置より後方に落ちた打球。

です。

一塁・三塁ベース付近から外野方向の打球が中心です。

塁審より前方のフェア地域に落ちた打球は、原則として検証対象外となります。


走者の塁の空過・追い越し・タッグアップ

走者に関する以下のプレーも対象です。

  • 前の走者を追い越したか
  • ベースを踏み忘れたか
  • タッグアップで捕球前に離塁したか
  • 第3アウトより得点が先だったかを判断するタイムプレー

特に犠牲フライの離塁や、複数走者が動く場面で使用される可能性があります。


デッドボール

投球が打者の身体やユニフォームに当たったかも対象です。

「グリップエンドに当たったのか」

「手に当たったのか」

「ユニフォームをかすめたのか」

が試合を左右する場面があります。


危険な衝突・スライディング

選手の安全に関わる、

  • 本塁での衝突プレー
  • 併殺を防ぐための危険なスライディング

も検証対象です。

これは単なるアウト・セーフだけでなく、危険防止ルールが適用されるかを確認するためのものです。


ストライク・ボールは検証できない

多くの視聴者が気になるのが、

「今の球はストライクでは?」

「ボール判定を映像で変えられないの?」

という点でしょう。

結論は、

ストライク・ボールは対象外。

です。

さらに、

  • ハーフスイング
  • ボーク
  • 反則投球
  • ファウルチップ
  • 自打球
  • インフィールドフライ
  • 故意落球

なども原則として検証対象外です。

プロ野球のリクエストでもストライク・ボール判定は対象外。

高校野球でも球審の判定が維持されます。


監督が直接グラウンドへ出るの?

高校野球独自の特徴が申告方法です。

監督がベンチから直接審判へジェスチャーをするのではありません。

プレーが一段落した後、

伝令を球審のもとへ送り、ビデオ検証を申し出ます。

球審が対象プレーであることなどを確認し、ネット裏の検証担当へ実施を伝えます。

流れは以下の通りです。

  1. プレーが終了する
  2. ベンチが検証を決断する
  3. 伝令が球審へ申し出る
  4. 球審が対象プレーか確認する
  5. 場内アナウンスとスコアボードで告知
  6. ネット裏で映像確認
  7. 球審がマイクで結果を説明

高校野球らしく、伝令を通じて申告するのがポイントです。


誰が映像を見る?

映像を確認するのは、グラウンド上の球審や塁審ではありません。

ネット裏にいる、

  • 審判幹事
  • 控え審判2人

の合計3人です。

3人が映像を確認し、審判幹事が球審へ結果を伝えます。

その後、球審が場内マイクを使って、

「判定通りアウトとします」

「判定を変更し、セーフとします」

などと説明します。

審判が集まってスコアボードの映像を見ながら判断するわけではありません。


検証時間は2分以内

ビデオ検証には、

2分以内

という時間制限があります。

長時間映像を見続けて試合が止まらないようにするためです。

2分以内に判定を変えるだけの確証が得られなければ、

グラウンド上の元の判定が維持されます。

「映像を見ても微妙」

「角度によって判断できない」

という場合は、審判の最初の判定が尊重されます。


地方大会では使えないの?

2026年夏の地方大会では、全国一律のビデオ検証は導入されていません。

高野連は、すべての地方球場に必要な撮影設備や検証体制を整えることは難しいと説明しています。

そのため、まずは実施可能な全国大会から導入。

2026年夏の選手権後は、

  • センバツ
  • 明治神宮大会

でも実施する方針です。

全国大会だけに制度を導入することへの反対意見もありましたが、映像を使って選手へより正しい判定を返すことを優先した形です。


プロ野球のリクエストとの違い

項目高校野球プロ野球
名称ビデオ検証リクエスト
9回まで1回原則2回
延長追加1回追加権あり
申告方法伝令が球審へ申し出る監督が審判へ合図
検証担当審判幹事+控え審判2人リプレー検証担当
制限時間2分以内制度に基づき確認
ストライク・ボール対象外対象外

高校野球では回数が少ないため、

いつ使うか

がより重要です。


監督はどの場面で使うべき?

1回しかない権利を、序盤の小さなプレーで使うのか。

終盤の勝敗を分ける場面まで残すのか。

監督には難しい判断が求められます。

例えば初回の一塁アウト・セーフ。

映像ではセーフに見える。

しかし試合はまだ始まったばかり。

ここで使って判定が変わらなければ、9回まで権利を失います。

一方、9回裏の本塁クロスプレーなら、迷わず使う場面でしょう。

ビデオ検証の導入によって、

判定だけでなく、監督の権利管理も新しい采配要素

になります。


甲子園で起こりそうな検証場面

2026年夏に多そうなのは、

一塁の際どいアウト・セーフ

内野安打や送りバントで発生しやすい場面です。

盗塁時のタッチ

足の速い選手が多く、手とタッチの一瞬が検証されます。

外野のダイビングキャッチ

捕球したのか、地面に触れたのかが焦点になります。

本塁クロスプレー

得点に直結するため、申告される可能性が高いでしょう。

フェンス際の大飛球

ホームランか二塁打かで試合展開が大きく変わります。


ビデオ検証で試合時間は長くなる?

1回の検証は2分以内。

各チーム1回なので、通常の9回なら最大2回程度が基本です。

毎試合必ず使用されるわけでもありません。

そのため、大幅に試合時間が伸びる可能性は低いでしょう。

一方で場内アナウンス、映像確認、球審の説明まで含めれば、一時的に試合が止まります。

投手にとっては休息になる可能性があり、打者側は集中を切らさないことが必要です。


まとめ|9回まで1回、延長で追加1回

2026年夏の甲子園で導入されるビデオ検証の重要ポイントは、

9回まで各チーム1回。

延長戦では新たに1回。

判定が覆れば基本的に回数を消費しない。

申告は伝令を通じて球審へ行う。

審判幹事と控え審判2人が映像を確認。

検証時間は2分以内。

確証がなければ元の判定を維持。

です。

ストライク・ボールやハーフスイングなどは対象外。

すべてを映像で判定し直す制度ではありません。

それでも、これまで審判の判断だけで進んでいた際どいプレーを、別角度の映像から確認できるようになります。

2026年夏。

甲子園で初めてのビデオ検証は、どの試合のどの場面で行われるのか。

そして最初に判定が覆るプレーは何になるのか。

新しい高校野球の歴史にも注目です。