「30年以内に70%〜80%の確率で起きる」と言われ続けている南海トラフ巨大地震。
人間にはいつ来るか分かりませんが、「膨大なデータを計算できるAIなら、Xデーをピンポイントで特定できるのではないか?」という期待が高まっています。

しかし、地震学の最前線では、AIは「魔法の水晶玉」ではなく、もっと現実的な「超高性能な聴診器」として扱われています。

当サイト「AI予想パビリオン」が、現在の科学でAIはどこまで地震を予知できるのか?
鍵となる現象「前兆すべり(スロースリップ)」の解析精度と、AIでも乗り越えられない「データの壁」について解説します。

【AI予想パビリオン:免責事項】

  • 記事の性質:本記事は、地震学および機械学習を用いた微動検知技術の現状を解説するものです。
  • 注意喚起:現時点での科学技術(AI含む)では、地震の発生日時を確約する「予知」は不可能です。「〇月〇日に地震が来る」と断定するデマや詐欺情報には十分ご注意ください。

結論:AIは「予知(Prediction)」はできないが「予測(Forecasting)」を変えつつある

まず、言葉の定義をはっきりさせる必要があります。
多くの人が期待するのは「予知(明日、〇〇県でM8が起きる)」ですが、これはAIでも不可能です。

しかし、AIは「今、地下で不気味なことが起きている」という異常検知のレベルを劇的に引き上げました。

AIが見つけた「地下のささやき」

地震予知の切り札とされているのが、プレート境界がゆっくりとズレ動く「スロースリップ(ゆっくりすべり)」現象です。
これが巨大地震の「前兆」になる可能性があります。

解析方法スロースリップの検知能力課題
従来(人間による解析)大きなノイズしか除去できない。
微弱な信号は見逃していた。
「波の音」や「トラックの振動」と区別がつかない。
最新(AI・深層学習)人間の100倍以上の感度。
ノイズの中から「特有の波形」を瞬時に抽出。
今まで「ゴミデータ」だと思っていた中に、実は前兆現象が隠れていたことを発見した。

AIは、人間が耳をすませても聞こえないレベルの「プレートのきしみ音」を聞き分け、巨大地震のカウントダウンが始まっていないかを24時間監視しているのです。

AI最大の弱点:「教師データ」が存在しない

なぜ、これほど優秀なAIでも「〇月〇日」と言い当てられないのでしょうか?
それはAIの学習の仕組みに原因があります。

AIが賢くなるには、大量の「正解データ(教師データ)」が必要です。
例えば、猫を認識するAIを作るには、数万枚の猫の画像を読み込ませます。

南海トラフのデータは「ゼロ」

しかし、南海トラフ地震のようなM8クラスの巨大地震は、100年〜150年に1回しか起きません。

  • 前回の発生:1944年・1946年(昭和東南海・南海地震)
  • 当時のデータ:デジタル地震計のデータは存在しない。紙の記録や古文書のみ。

つまり、最新のAIにとって「巨大地震が起きる直前の詳細なデータ」は、この世に1つも存在しない(学習できない)のです。
「過去問」を一度も解いたことがないAIが、いきなり「本番」の日時を当てるのは、数学的に不可能なのです。

AIができる現実的な「命の守り方」

日時を当てることはできませんが、AIは別の方法で私たちの命を救おうとしています。
それは「緊急地震速報の高速化」です。

従来のシステムは、地震発生から「P波(初期微動)」を検知し、震源や規模を計算するのに数秒かかっていました。
最新のAIモデル(Transformerなど)を活用した手法では、わずか「0.X秒」の揺れデータから、その後の巨大な揺れ(S波)の到達を即座に予測します。

⏱ AIが稼ぐ「数秒」の価値

AI予測によって、緊急地震速報が今より3秒〜5秒早く鳴るようになると期待されています。
たった数秒ですが、その時間があれば以下のことが可能になります。

  • 新幹線やエレベーターを緊急停止させる。
  • 火を使っているコンロを消す。
  • 落下物から身を守るために机の下に潜る。

まとめ:AIは予言者ではなく「番犬」である

「南海トラフ地震」はAIで予知できるか?
2026年時点の答えは、「Xデーの特定は無理だが、異常事態の発見は人間より遥かに早い」です。

AIは、地下深くのプレート境界で起きる「スロースリップ」という不気味な足音を聞き逃しません。
「予知できないなら意味がない」と悲観するのではなく、AIという「耳のいい番犬」が監視してくれている間に、家具の固定や備蓄といった「人間がやるべき準備」を進めておくこと。
それこそが、AI時代における正しい防災のあり方なのです。

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